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大阪地方裁判所 昭和29年(タ)46号 判決

原告 高倉和子

被告 チヱスター、アーサー、メリツク

主文

本件を岐阜地方裁判所に移送する。

理由

本件訴の要旨は大阪府下に住所を有する日本人である原告より岐阜県下に最後の住所を有したその夫でありアメリカ合衆国人である被告を相手どり民法第七七〇条第一項第一、二号及び第五号に基き離婚の判決を求めるというにある。

そこで、本件につき、当裁判所が管轄権を有するや否やにつき検討するに、真正に成立したと認める甲第一号証によると、日本人である原告とアメリカ合衆国籍を有する被告とは昭和二六年一〇月四日婚姻をなしたが、婚姻後もそれぞれ自己の氏を称し、氏の変更をしていないことが認められるから、所謂称氏者はなく、称氏者を基準として離婚事件の管轄を定めた人事訴訟法第一条の規定を適用して、その土地管轄を定める余地はないが、離婚事件についても通常の民事上の訴と同様、原告から被告の関係のある場所に出向いて追行するを公平とすること勿論であるから、本件のような場合においては、右の趣旨から規定された民事訴訟法第一、二条の規定を準用して、その土地管轄については、被告の最後の住所地を管轄する裁判所に属するものと解するを相当とする。

そうだとすると、本件は岐阜地方裁判所に専属し、当裁判所に管轄がないから、民事訴訟法第三〇条第一項に則り主文の通り決定する。

(裁判官 相賀照之 中島孝信 小畑実)

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